秘密保持契約その4

5.秘密保持義務(守秘義務)その2 
(1)開示の範囲
秘密保持義務の例外を規定する際には、秘密保持義務の例外となる場合の「開示の範囲」を定めることが重要です。例外として規定されている場合であっても、関係ない情報の開示を認める必要はないので、合理的に必要な範囲、あるいは、必要最低限の範囲といった限定をするのが妥当です。必要最低限とすると、厳密に考えると、かなり神経質に開示が必要か否かを検討する必要があることになります。
(2)使用の目的と競業の禁止
秘密保持義務を負う当事者は、開示を受けた秘密情報を、開示された目的(取引をするか否かの検討、投資をするか否かの検討など)以外に使用しないこともあわせて規定されるのが通常です。また、秘密情報を開示した相手方が、開示した当事者と競合する事業を行う可能性があるような場合には、そのような行為を禁止する必要があります。この場合、秘密情報に基づいて競業してはならないと定めることになります。
(3)情報の返還・複製・管理
秘密情報を開示した目的が達成された場合(不達成となった場合)には、開示を受けた当事者は、開示した当事者の指示に従って、開示を受けた秘密情報を返却するか、または、破棄する義務もあわせて規定されています。この場合、返却をした場合や、破棄した場合については、返却を受けた当事者からの返却された情報の受領証や、破棄した当事者からの破棄の確認書を、一定期間内に交付するものとして、情報の取り扱いを明確にしておくことが妥当ですが、それらの書面の様式も秘密保持義務に添付するのが簡便です。
また、特に機密性の高い情報を開示する場合には、秘密情報(媒体も含む)の複製自体を禁止しておくことも考えられます。また、複製を認めるとしても、複製物の管理や、複製物を含む秘密情報の返還請求について規定しておくのが妥当です。複製物の管理については、秘密情報とともに、その管理について善管注意義務を課したり、管理体制について規定したりすることになります。